主文
1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実 及び 理由
第1 請求の趣旨
1 被告は,原告に対し,293万1248円を支払え。2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言。
第2 事案の概要等
1 事案の概要本件は,別紙目録記載の建物(以下 「本件建物」という )及び駐車場(以下 「本件駐車場」という )を所有して管理する原告が,賃貸借契約は賃料不払いを理由に解除されたとして,本件建物及び駐車場の賃借人の連帯保証人である被告に対し,平成9年1月分以降(約10年分)の未払賃料及び賃料相当損害金として約300万円の支払いを求めた事案である。
2 争いのない事実及び証拠によって認められる事実(証拠によって認定した事実については,末尾に証拠を掲載した )。
(1) 原告は,昭和57年10月26日,訴外Aに対し,本件建物を次の約定で賃貸した。
ア 使用目的 居住用
イ 賃 料 1か月2万2000円
ウ 賃借人が賃料を3月以上滞納したときは,原告は本件建物の明渡しを請求できる。
エ 本契約は,公営住宅法,同法施行令,福山市営住宅等条例及び条例施行規則による。
(2) 被告は,昭和57年10月26日,訴外Aが原告に対して負担する本件賃貸借契約上の債務を保証人として連帯して履行することを約した。
(3) 上記賃料は,平成5年11月1日から2万6600円,平成10年4月1日から3万6000円,平成11年4月1日から3万5500円,平成12年4月1日から2万5300円 平成13年4月1日から3万3800円,平成14年4月1日から3万3300円,平成15年4月1日から3万2800円,平成16年4月1日から3万2400円,平成16年5月1日から3万5200円(駐車場使用料を含む。),平成17年4月1日から3万5100円(駐車場使用料を含む。),平成17年12月1日から1万9900円(駐車場使用料を含む )に改定された(甲3,4 。)
(4) 原告は,平成16年5月1日,訴外Aに対し,本件駐車場を使用料1ヶ月2800円,期間は訴外Aが本件建物の賃借資格を有するまでの約定で使用許可した(甲4,6 。)
(5) 訴外Aは 平成9年1月分から賃料の支払を滞納するようになったため,原告は,訴外Aに対し,平成18年10月25日到達の内容証明郵便で,未払賃料合計275万6000円を同書到達後5日以内に支払うよう,もし支払わなかったときは本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたが,訴外Aはこれを支払わなかったため,本件賃貸借契約は平成18年10月31日
に終了した(甲2の1及び2,3 。)
(6) 原告は,被告に対し,平成9年1月以降,訴外Aの賃料債務不履行の事実を伝えたり連帯保証債務履行の請求をすることを一切行わずに放置していたが,平成18年10月11日に至って初めて,訴外Aの未払賃料合計275万6000円を10日以内に連帯保証人として支払うよう催告し,更に,同年同月24日,翌日到達の内容証明郵便で,訴外Aの未払賃料合計275万6000円を同書到達後5日以内に連帯保証人として支払うよう催告した(甲9の1及び2,13,乙1,2 。)
(7) 訴外Aは,平成19年7月25日,強制執行により本件建物を明け渡した(弁論の全趣旨 。)
3 争点及び当事者の主張
(争点)本件未払賃料等を連帯保証人である被告に請求することの当否。
(被告の主張)
(1) 原告は,平成9年1月分から賃料の不払いがあったとして,本件請求をしているが,福山市営住宅等条例41条記載によれば,家賃を3ヶ月以上滞納したときは「当該入居者に対し,当該市営住宅等の明渡しを請求することができる」と規定している。
したがって,本件建物賃貸借契約の連帯保証人の保証の本旨は3ヶ月を限度として保証しているものであって,3ヶ月分の請求ならともかく,入居者の賃料不払いを無制限に保証しているものではない。
(2) 本件請求は,地方自治体の公的義務に違背し,権利の濫用として無効である。
(3) 原告は,被告に対しては平成5年12月20日まで合計8回にわたって催告したと主張する。
したがって,被告の連帯保証債務は,原告の主張する上記最終請求日から満5年をもって時効により消滅しているものであるところ,被告は,本訴において時効の利益を援用する。
(原告の主張)
(1) 被告の保証は3ヶ月分を限度としたものではない。
原告が 被告に対し 途中から催告を差し控えていたことは事実であるが,公営住宅であることからできるだけ法的手続を留保していたとしても,訴外Aに対しては延滞賃料の支払いを厳しく催告し続けており,また,被告は訴外Aの義理の叔父であって意思の疎通も十分されていることなどを考えた場合には,仮に原告の被告に対する本件請求が地方自治体の管理業務として問題があるとしても,保証責任の期間が制限されるものではない。
(2)ア 原告は,市営住宅の明渡請求訴訟の提起等,家賃滞納整理については福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱に基づいて事務処理している。
(ア) 1ヶ月以上の滞納者に対しては,まず督促状を送付する。
(イ) 3ヶ月以上の滞納者に対しては 「さきに督促状を送付しましたが,いまだ未納ですので表記の指定納入期限までに完納してください。もし,期限までに完納できない事情がある場合は,住宅課へご相談ください。なお,住宅・駐車場使用料の未納については連帯保証人に対しても連絡済です 」の文書を送付する。
(ウ) 5ヶ月以上の滞納者に対しては 「あなたの滞納については再三督促しているにもかかわらず表記の指定納入期限までに完納してください。
なお,連帯保証人に対しても催告書を送付しております (予告)。
期限までに納入されない場合は裁判所に住宅明け渡しの訴えを行うことになります 」の文書を送付する。
(エ) 6ヶ月以上の滞納者で家賃を支払う意思のないものに対しては,法的措置を行う旨記載した文書を送付し,警告するとともに臨戸訪問等により本人と接触し,納付指導を行う。
(オ) 市営住宅明け渡し等請求訴訟の訴え提起前日までの間に,滞納家賃の全額又は,3分の2以上の額を納付し,かつ当該納付すべき残額について分割納付誓約書を申し出た場合は,提訴しないことができるものとする。ただし,分割納付誓約の内容は,滞納が1年以内に整理できるものとする。
イ 原告は,家賃滞納者に対しては,これまで上記要綱に基づいて事務処理していたが,市営住宅が住宅に困窮する低所得者に対し低廉な家賃で賃貸し,市民生活の安定と社会福祉増進を目的としていることから,実務的には明け渡し等請求訴訟の訴えは,滞納額とこれについて賃借人が原告の納付指導に基づいて納付誓約書を差し入れるなど誠実に対応されているかどうかによって慎重に処理していた。
ウ 連帯保証人である被告らに対して原告が催告を控えるようになったのは,訴外Aが,平成5年10月に納付誓約書を提出し,誓約書どおり分納を履行していたにもかかわらず,原告担当者が,平成5年12月20日,過って被告に催告状を出したため,訴外Aが,平成6年1月,原告担当課に来て強く抗議したため,原告は,被告ら保証人にお詫びの電話をするとともに,その後は訴外Aに賃料滞納があっても被告ら保証人に対する催告を控えるようになったものである。
(3) 主たる債務者について時効中断の事由が生じたときは,保証債務の付随性に基づき,保証人にもその効力が及ぶところ,訴外Aは,原告に対し,
@ 平成11年8月25日,未払賃料債務53万7700円を承認し,
A 平成12年8月14日,未払賃料債務59万4100円を承認し,
B 平成14年8月14日,未払賃料債務132万6300円を承認し,
C 平成17年9月5日,未払賃料債務253万6100円を承認し,
それぞれ分割して完納する旨を誓約しているので,消滅時効は上記各承認により中断している。
消滅時効完成後の承認が時効利益の放棄となり,主たる債務者がなした時効の利益の放棄は保証人に対して効力を生じないと解されるとしても,上記各承認は,時効完成後の承認ではないから,保証人である被告に効力が生じるものであり,被告の消滅時効の主張は理由がない。
第3 当裁判所の判断
1 ( 上記認定事実に加えて 証拠 甲1 5 7 8 10ないし17 証人B 証人C)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。(1) 本件市営住宅は,公営住宅法にいう公営住宅に該当するものであるところ,公営住宅法は,国及び地方公共団体が協力して,健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し,これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し,又は転貸することにより,国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものであって(法1条 ,この法律によって )整備された公営住宅の使用関係については,管理に関する規定を設け,家賃の決定,家賃の変更,家賃の徴収猶予,修繕義務,入居者の募集方法,入居者資格,入居者の選考,入居者の保管義務,明渡し等について規定し(法第) 3章 ,また,法の委任(法47条)に基づいて制定された条例も,使用許可,使用申込,申込者の資格,使用者選考,使用手続,使用料の決定,使用料の変更,使用料の徴収,明渡し等について具体的な定めをしているところである。
そして,福山市営住宅等条例(甲5,8)の規定によれば,市営住宅等の入居決定者は,決定のあった日から10日以内に,入居決定者と同程度以上の収入を有する者で,市長が適当と認める連帯保証人2人の連署する請書を提出することが要求されている。
(2) 被告は,昭和57年10月26日,訴外Aが原告から本件建物を賃借するに際し,福山市営住宅等条例の上記規定に基づき,訴外Aの実父である訴外亡D(平成13年 a 月 b 日死亡)とともに訴外Aの連帯保証人となることを承諾し,市営住宅使用請書(甲1)の連帯保証人欄に署名・押印した。
なお,被告は,訴外Aの実母の姉の配偶者であり,すなわち,訴外Aの義理の伯父の関係にあるが,訴外Aの生活状況については必ずしも十分に把握しておらず,訴外Aが平成5年に破産宣告を受けたことすら,最近まで知らずにいた状況であった。
(3) 訴外Aは,平成3年頃から本件建物の賃料を滞納するようになった。
(4) 原告には,市営住宅使用料(家賃)の納付の円滑化を図るため,昭和63年4月1日から施行された「福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱」(甲16)が存在し,納期限までに家賃を納付しない市営住宅の入居者やその連帯保証人に対する督促や明渡請求訴訟の提起等,家賃滞納整理については,上記要綱に基づいて事務処理することとされていたものであるところ,上記要綱には以下の事項が定められていた。
ア 家賃の滞納が発生した場合には,滞納者に対し事実の認識と納付指導のため,つぎの文書を送付する。
(ア) 1ヶ月以上の滞納者に対しては まず督促状 様式1 を送付する。
(イ) 3ヶ月以上の滞納者に対しては 「さきに督促状を送付しましたが,いまだ未納ですので表記の指定納入期限までに完納してください。もし,期限までに完納できない事情がある場合は住宅課へご相談ください。なお,住宅・駐車場使用料の未納については連帯保証人へ連絡済です 」。
の文書(様式2)を送付する。
(ウ) 5ヶ月以上の滞納者に対しては 「あなたの滞納については,再三督促しているにもかかわらずいまだ完納されていません。表記の指定納入期限までに完納してください。なお,連帯保証人に対しても催告書を送付しております (予告)期限までに納入されない場合は,裁判所に住宅明渡の訴えを行うことになります。」 ( の文書 様式3 を送付する ) 。
イ 以上の規定により,督促・催告したにもかかわらず納付しない滞納者の連帯保証人に対し,つぎの文書を送付する。
(ア) 3ヶ月を超え5ヶ月までの滞納者の連帯保証人に対しては 「さきに「住宅・駐車場使用料完納指導依頼書」を送付しましたが,いまだに完納されていません。ついては,連帯保証人であるあなたに請求しますので 入居者と相談のうえ指定納入期限までに納付してください。なお,これ以上滞納が続くようであれば,入居者に対しては,裁判所に住宅明渡の訴えを行うこととなります。また連帯保証人に対しては,住宅使用料等(起訴費用・損害賠償金含む)の支払いを請求することになります 」の文書(様式4)を送付する。
(イ) 6ヶ月を超える滞納者の連帯保証人に対しては 「あなたが連帯保証人となっている市営住宅入居者は,市の再三の督促にもかかわらず,表記のとおり滞納となっています。ついては本人と相談のうえ指定納入期限までに完納されるようご指導ください。なお,期限までに完納されない場合は,連帯保証人のあなたに請求することにもなりますのであらかじめお知らせしておきます 」の文書(様式5)を送付する。
ウ 6ヶ月以上の滞納者で,家賃を支払う意思のないものに対して法的措置を行う旨記載した文書を送付し,警告するとともに,臨戸訪問等により本人と接触し,納付指導を行う。
エ 市営住宅明け渡し等請求訴訟の訴え提起前日までの間に,滞納家賃の全額又は 3分の2以上の額を納付し、かつ当該納付すべき残額について分割納付誓約を申し出た場合は,提訴しないことができるものとする。
ただし,分割納付誓約の内容は,滞納が1年以内に整理できるものとする。
(5) 原告は,本件建物の賃料を滞納するようになった訴外Aに対しては,平成3年1月20日から平成5年6月18日までの間,上記様式1ないし3の催告書等を11回にわたって送付するとともに,保証人である被告に対しても7回にわたって催告書を送付した。
一方,訴外Aは,平成5年6月7日に自己破産決定を受け,その後,免責決定も受けたが,原告に対しては,平成5年10月19日,納付誓約書を提出して未払賃料を分納することを約束し,その後,同約束に従ってこれを履行していた。
ところが,訴外Aが上記納付誓約書に記載された約束を概ね遵守して未払賃料の分納を続けていたにもかかわらず,原告担当者は,平成5年12月20日,過って被告に対して催告書を送付してしまったため,訴外Aは,平成6年1月,原告担当課に来てそのことを強く抗議し,原告担当者は,被告に対し,電話で謝罪した。
このことがあってから,原告は,内部的な申し送りとして,訴外Aに賃料滞納があっても,上記納付誓約書に記載された約束を概ね遵守して未払賃料の分納を続けている限りは,被告ら保証人に対しては催告書の送付を控える取り扱いとすることを取り決めた。
(6) ところが,訴外Aは,平成6年夏頃から,上記納付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月17日現在の滞納額は265万3400円と増加した。
原告は,訴外Aに対しては,再三にわたって催告書を送付し,臨戸訪問等により本人と接触し,納付指導を行うなどし,更には,平成11年8月25日,平成12年8月14日及び平成17年9月5日には納付誓約書を提出させるなどしたが,被告に対しては,上記の内部的な申し送りの趣旨を後任者に正確に伝えなかったこともあってか 「福山市営住宅使用料(家賃)滞納 」 整理要綱 (甲16)に反して,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していた。
なお,この間の平成13年7月10日,訴外Aのもう1人の連帯保証人である訴外亡D(訴外Aの実父)は死亡した。
2 被告は,福山市営住宅等条例41条(2)において,家賃を3ヶ月以上滞納したときは「当該入居者に対し,当該市営住宅等の明渡しを請求することができる」と規定しているところから,本件建物賃貸借契約の連帯保証人の保証の本旨は3ヶ月を限度として保証しているものであって,入居者の賃料不払いを無制限に保証しているものではないと主張するので,まず,この点について検討する。
公営住宅法は,国及び地方公共団体が協力して,健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し,これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し,又は転貸することにより,国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものである(法1条)ことは上記判示のとおりであるから,そもそも,公営住宅の賃貸借において,住宅に困窮する低額所得者である賃借人の賃料未払いを担保するために,賃貸借契約締結の条件として連帯保証人を付することを要求することの正当性及び合理性自体に疑問があるところであり,本来,生活保護法における住宅扶助の制度と連動させるなどの法的整備が望まれるところであるが,公営住宅の賃貸借において賃貸借契約締結の条件として連帯保証人を付することを要求すること自体が違法であるとまで解することはできず,一方,連帯保証人を付することの効用としては,公営住宅の賃借人に対し,連帯保証人に迷惑を掛けてはいけないという道義心から賃料支払義務の確実な履行を促す効果が期待でき,また,公営住宅の賃借人が賃料を滞納した場合に,公営住宅の賃借人に対して連帯保証人から納付を促してもらうことによって,賃料支払義務の履行をより強力に促すことができるという効果が期待できるのであり,上記認定にかかる「福山市営住宅使用料(家賃)滞納」 整理要綱 (甲16)も,滞納整理に関する行政機関の内部的な規範ではあるが,以上の趣旨に添うものとして評価できる。
以上の観点によれば,本件建物賃貸借契約における連帯保証人の保証責任の範囲として,入居者の賃料不払を無制限に保証していると解することは相当でなく,自ずから社会的相当性の認められる一定の範囲に限定されるべきものではあるが,その責任範囲についての明確な約定の存在しない本件において,福山市営住宅等条例41条(2)の規定のみを根拠として連帯保証人の保証の本旨は3ヶ月を限度とするものであると解することは必ずしも相当でなく,この点に関する被告の上記主張は直ちには採用できない。
3 しかしながら,公営住宅の賃貸借契約における連帯保証人の意義が上記判示のとおりであって,入居者の賃料不払いを無制限に保証していると解することは相当でないことは上記判示のとおりであるから,公営住宅が住宅に困窮する低所得者に対し低廉な家賃で賃貸し,市民生活の安定と社会福祉増進を目的としていることから,公営住宅の賃貸借契約に基づく賃料等の滞納があった場合の明渡等請求訴訟の提起に関して,その行政実務において,滞納額とこれについての賃借人の対応の誠実さなどを考慮して慎重に処理すること自体は相当且つ適切な処置であるとしても,そのことによって滞納賃料等の額が拡大した場合に,その損害の負担を安易に連帯保証人に転嫁することは許されず,明渡等請求訴訟の提起を猶予する等の処置をするに際しては,連帯保証人からの要望があった場合等の特段の事情のない限り,滞納額の増加の状況を連帯保証人に適宜通知して連帯保証人の負担が増えることの了解を求めるなど,連帯保証人に対しても相応の措置を講ずべきものであるということができる。
これを本件についてみるに,連帯保証人である被告に対する原告の催告状況は上記認定のとおりであって,賃借人である訴外Aが,平成6年夏頃から,納付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月17日現在の滞納額は265万3400円と増加したにもかかわらず,被告に対しては 「福山市営住宅使用料(家賃)滞納整理要綱 (甲16)に反して, 」平成5年12月20日に催告書を送付したのを最後に,平成18年10月11日に至るまで,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していたものであり,原告には内部的な事務引継上の過失又は怠慢が存在するにもかかわらず,その責任を棚上げにする一方,民法上,連帯保証における責任範囲に限定のないことや,連帯債務における請求に絶対効が認められることなどから,被告に対する請求権が形骸的に存続していることを奇貨として,敢えて本件訴訟提起に及んでいるものであり,本件請求における請求額に対する被告の連帯保証人としての責任範囲等を検討するまでもなく,本件請求は権利の濫用として許されないものというべきである。
4 以上によれば 原告の本訴請求は その余の点について判断するまでもなく,理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決する。
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